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成功する長寿命化とは何か

庄内・社会基盤技術フォーラム 西川国土技術研究所長が特別講演

2010月1月26日掲載

 庄内・社会基盤技術フォーラムが1月26
日、酒田市飯森山地内の酒田市交易研修セ
ンターで開かれ、16の事例・研究成果が発
表された。
 このフォーラムは、土木学会東北支部が
共催、東北建設協会が協賛して、産・官・
学が連携して、庄内地域の社会基盤技術の
向上を図り、さらに他の地域へも情報を発
信していこうと企画されたもので、今回で
15回目を迎える。
 特別講演は、20年前に酒田工事事務所長
として7号の塩害橋対策で陣頭指揮をとっ
た現国土交通省国土技術政策総合研究所の
西川和廣所長が「戦略的維持管理とは何
か」と題して講演。その中で同氏は「見な
い、見過ごし、先送りの3要素が安全と安
心を脅かす。そうならないためには、戦略
的維持管理が必要で、まず、どんなレベル
で達成すれば成功かという目標、次に、ど
のような道筋で目標にたどり着くのかと

いう戦略があり、そして、どのように壁を
越えていくのかという具体的な戦術が必要
になる。道路橋の長寿命化では、目標は、
橋だけでなく、道路全体の機能が将来にわ
たって維持されることであり、長寿命化は
戦略。そして、予防保全は、長寿命化を実
現する戦術ということになる。戦略的維持
管理の策定に必要となるのは、施設の性質
や性格、どのような目的で造られたのか、
機能が停止した場合の影響、物理的な寿命
、機能的な寿命、寿命を縮める病とは何か
、まず対象となるものを知ることであり、
同時に、自らの戦力を知ることが重要。優
先順位としては、安全はコストよりも重要
だが、財政状況が厳しい地方道の維持管理
では、重点化・絞り込みによる負担軽減と
目標レベル・対処方法による負担軽減が有
効だ」と説明した。また「設計と維持管理
は根本的に別物。設計を創造力とすると、
維持管理は、なぜそうなったのかという

推理力が必要であり、維持管理の方が難し
い。
何か、いつもと違うと気づくのは人の目で
あり、経験に基づいた勘。実体験と想像力
で壁を越えていかなければならない。ま
た、点検と診断は別の業務であると認識す
ることも重要だ」と述べた。最後に「事務
所長時代、災害が発生した場合の対応は、
非常に迅速ですばらしいものだったが、施
設の老朽化というのは、非常にゆっくりと
進行する災害であり、そうしたものに誰も
対応できない、対処の仕方が分からないと
いうのが実情。その改善が今後の課題だ」
と結んだ。
 発表された事例・研究成果は次の通り。
・月山国道維持出張所VSP(歩道除雪)
の取り組み
・堤防法面芝 野火による経過観察と一考

・日沿道トンネル群区間における融雪計

画について
・乾いた砂の充填時に形成する微視的な不
均一構造
・事業場で取り組むメンタルヘルス
・高校生による住みよい街酒田の提案
・旧荘内病院解体工事について
・用地調査業務について(民有地と国有林
の調査の相違について)
・家際排水区における雨水対策
・くらしのみちゾーン整備事業について
・軟衝撃グラブによる港内浚渫工事
・余目酒田道路における水生生物の環境保
全措置について
・粗石付斜路式魚道工における研究
・庄内の山地渓流における放流渓流魚の移

・高速道路におけるバイオマス活用の取り
組みについて
・浄化センター放水路を利用したオープン
クロスフロー型水車の実証試験

会場の模様
▲会場の模様

長寿命化について講演する西川氏
▲長寿命化について講演する西川氏